相続した土地を数十年にわたり無償で利用していた親族から明渡しを受けた事例

事案の概要

・相続人は配偶者、長男、長女の3人です。
・相続した土地上で、被相続人の父が設定した使用貸借権により、親族が駐輪場事業を営んでいる。
・使用貸借契約は、土地利用の必要が生じたら即座にするという約束だったが、結果的に30年以上継続している。
・親族は土地の使用料、固定資産税も一切負担していない。
・最初に駐輪場を経営のため土地を借り受けた親族は死亡し、その配偶者が事業を継続している。

事案の問題点

・相続人らは、駐輪場を経営する親族に対して土地の返還をもとめましたが、使用貸借契約ではなく、親族は、賃貸借契約が成立していることを理由に返還を拒絶しました。
・土地の利用については、親族間でなされたため口頭で合意されており、合意内容を明確に示す契約書等の書類がないうえ、口頭で合意した当事者も死亡しているため、事実関係の詳細を知る者がいませんでした。
・土地上には、法律上の建物と言えるか否か(工作物に留まるか)の判断が微妙な駐輪用のスペースや事務室が存在していました。

対応内容

・当職は受任後、親族に対して一定の猶予期間をおいて土地の明渡しを求めましたが、明渡しに向けた回答が得られなかったため、訴訟を提起しました。
・訴訟の提起に際しては、土地上の駐輪スペースや事務室が建物・工作物の何れに評価されても問題がないように、主位的に工作物撤去土地明渡し、予備的に建物収去土地明渡しの請求をしました。
・土地の利用権限に関しては、当方が使用貸借、親族側が賃貸借との主張をしていたこと、使用貸借契約の終了原因を立証しきれるかについては若干のリスクがあったことから、所有権に基づいて土地の明渡しを求めました。
・訴訟においては、相手方から賃貸借契約の主張がなされましたが、相手方が主張する賃料の額が固定資産税相当額にも充たないことから、この点を指摘して賃貸借契約の成立を否認しました。
・最終的に裁判所から明渡し相当の心証が開示され、一定の猶予期間をおいて土地を明け渡すとの和解が成立しました。なお、土地上の事務室については、訴訟中に保存登記がされたため、明渡し猶予期間満了時に依頼者に所有権が移転する内容の仮登記をするための条項を設定しました。

弁護士小池のコメント

本件は、土地利用権についての合意内容に関する資料もなく、当事者も死亡しているため、契約の趣旨を確定するのが難しい事件でした。

訴訟段階では、相手方が賃貸借契約を主張したものの、賃料支払の事実を立証できなかった上、固定資産税すら負担いていないことが明らかになったため、明渡し前提の和解勧告につながったものと思われます。

和解の条件に関しては、現実的に明渡し可能な猶予期間の設定に応じるとともに、万が一猶予期間後の明渡しがなされなかった場合に備え、土地上の建物の所有権が明渡し猶予期間満了時に依頼者に移転するようにしました。

これにより、相手方が明渡しをしなかった場合でも建物から退去を求めれば済むため手続的負担がかるくなります(建物の収去をする場合強制執行の負担が大きくなります)。

本件は、親族間の数代にわたる使用貸借契約の処理を行ったものです。類似の事例は比較的多く見受けられることから、実務上、参考になるものと思われますのでご紹介します。

 

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