最近の相続相談の傾向-相続対策編

弁護士法人Boleroの弁護士小池です。

今回は前回の更新に引き続き、最近の相続案件の相談の傾向をご紹介いたします。前回は、相続開始後の紛争案件をご紹介しましたので、今回は、相続開始前の相続対策案件をご紹介します。

まず、最初にご紹介する相続対策の相談は、遺言(特に公正証書遺言)作成のご相談です。

遺言作成のご相談は以前から相当数ありましたので、最近特に増加したという実感はありませんが、安定して一定数の相談があり、民事信託が話題となるご時世でも、相続対策としては最も一般的なものと思われます。

もっとも、遺言が比較的簡単に作成できることの裏返しで、以下のような場合は、トラブルの原因となっている場合もありますので、注意する必要があります。

最初は認知症の方が遺言を作成する場合です。

認知症を患っている=遺言を作成できないということではありませんが、遺言作成において慎重な対応が必要になることは当然です。

ところが、現実には、認知症を患ったかたがおよそ理解できないような複雑な遺言を作成している事例もあります。遺言作成を専門家や信託銀行に依頼すると、相談者の様々なニーズを遺言に落とし込んでくれますが、度が過ぎるとおよそ本人の意思に基づくとは考えられないものになってしまいます。

ご本人の認知症の程度によっては、かえってシンプルな遺言が相応しい場合もありますのでご注意ください。

次にご紹介するのは、遺産の規模が大きい場合の遺言作成です。

遺言を作成するというと、財産をだれに相続させるかを遺言で決めれば完成と考えている方が結構多くいらっしゃいますが、これでは遺言を使いこなしたとは言えません。

遺言は、財産を承継させる最後の仕上げですので、その前段階で、財産の情報を整理し、自分が望む財産の承継方法との関係で、今ある財産は必要性があるのか否かをよく考える必要があります。

その上で、不要な財産は売却して金銭化する、他の財産に組み替えるなどの措置も必要になる場合があります。

このような対応により、財産の承継計画にそった筋肉質な財産にした上で、遺言を作成すると、遺言がより有効に機能します。

遺言の前段階に重要な作業があることにご注意ください。

遺言の次にご紹介するのは、同族株式の問題です。

同族株式の問題は、主に事業・会社経営の承継の観点から分散した株式を集約する場合と経営に関与していない(できない)少数株主が相続税対策の観点から株式を処分する場合があります。

会社の業歴が長くなると、設立時の株主が亡くなったことによる相続により株主が増加することがありますが、これらの株主の多くは会社経営には関心がなく、株主総会における議決権行使にも無関心のため、会社経営の大事な局面での株主総会の運営に支障がでる恐れがあります。

また、株主の数が増加すると、会社の設立当初の株主や会社経営関与している株主では共有されていた価値観を全株主で共有することが困難になり、これが経営方針についての意見対立・紛争の火種になりかねません。

会社の安定した経営という観点からは、この様な問題を解消しておく必要があることから、同族会社の相続対策として株式の集約を行うことがあります。

他方、少数株主の相続税対策の観点からの同族株式の問題はまったく異なる視点になります。

相続税における同族会社の株式の問題は、相続税における同族株式の評価方法が個別の事案では過大な評価になり得るため、これを避けるために相続開始前二株式を処分することが核心部分になります。

同族株主か否かは、次のとおり、同族関係にある株主が所有する株式の議決権割合により判定されます。

「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の30%以上(株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が50%超である場合には、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいいます。この場合の「株主の1人」とは、納税義務者に限りません。
【国税庁ホームページ 「同族株主の判定」から引用】

そして、同族株主判定の前提となる同族か否かは、客観的な親族関係(血族6親等及び姻族3親等)を基礎として判断されます。

同族関係の範囲については、このような客観的な親族関係に加え、実質的な人間関係が密な場合も含まれてきます。

他方、客観な親族関係では同族に含まれるが実質的な人間関係破綻している場合でも、同族であることが否定されることはありません。

この点が、同族会社の同族株主の相続で大問題になってきます。

例えば、A社の株式70%をX(兄)が所有し、残り30%をY(弟)を所有していた場合、Xは、A社の経営においては、単独で特別決議までも行うことができるため、Yの了承がなくとも自由に会社経営が可能です。そのため、XとYの関係が破綻している場合、XはYを取締役に選任せず(報酬を与えない)、株主配当も行わないことが可能になります。その結果、Yは30%の株式を有していても事実上利益を得ることができません。

このようなYが所有するA社株式は、実質的にみると極めて価値が低いと言わざるを得ませんが、相続税法上は、Yは同族株主と評価されるため、原則的な評価方法により、株式の評価が行われ、相当高い評価がつく可能性があります。

一般に、相続税に関しては、「もらう以上に課税されることはない」と言われますが、上記事例は、「もらう以上に課税される」可能性がある例外事例と言えます。

最近はこのような問題意識を持つ方が増加しており、類似の相談も増加傾向にあります。同族株式を所有されている方は、この点を念頭において対策をご検討ください。

以上、弁護士法人Boleroの最近の相続相談の傾向をご紹介させていただきました。

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