遺言による資産承継と債務の機能【事例編】

相続あんしん相談室の弁護士小池智康です。

 

今回のテーマは、遺言による資産承継と債務の機能【事例編】です。

前回、遺留分は、被相続人の積極財産から債務を控除して算定されるが、いくら遺留分が少なくなっても債務が多いのでは実入りが少ないという問題があるのでは、という疑問を提起しました。

この問題点は、次の二条件をみたす場合であれば解消できると思います。

①負債が多くても遺留分の制約をなるべく受けずに特定の相続人に資産を承継させたい場合

②積極財産に負債を返済する収益力がある場合

 

最も典型的な事例は、ローンを組んで収益不動産を所有されている資産家の方だと思います。

この場合、最大のネックになっていた債務が多額だという問題を将来の収益により解決できます。

そのため、債務の存在が遺留分の制約を減少させるという機能を十分に活用できるようになります。

 

そして、実は、この債務の存在が遺留分の制約を減少させることから、特定の相続人に資産を承継させやすくなるという機能は、不動産を利用した相続税対策とも強く結びついています。

資産家の方の場合、融資を受けて、所有する土地上に収益物件を建築するという相続税対策を行っている方が多くいらっしゃいます。

これは、現金と不動産の評価の差異を利用した相続税対策ですが、この際に受けた融資(債務)が相続税対策と同時に、遺留分の制約を軽減する機能をもつことになります。

そのため、相続税対策で収益不動産を建築する際には、同時に債務を利用して、遺言による資産承継計画を練るのが有効になります。

ところが、実際は、相続税対策として収益物件を建築し、相続税の軽減を実現したものの、遺言などによる資産承継の準備をしていなかったことから、遺産分割協議で難航するという事態がよくあります。

 

相続税対策で収益物件を建築した時点で遺言による資産承継の条件も整っているわけですから、これを逃して「争続」に至っては残念過ぎます。

 

債務には相続税対策という機能に加えて、遺言による資産承継の自由度を高める機能があることにご留意いただき、円滑な資産承継を実現していただきたいと願う次第です。

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