自宅の敷地にあたる土地を底地として評価した上で、他の相続人から代償取得した事例

事案の概要

相続関係

本件の被相続人は相談者の配偶者(妻)でした。被相続人には子供がいなかったことからか相続人は、被相続人の配偶者(夫)と被相続人の兄弟姉妹4人でした。

遺産の内容

本件の遺産は、自宅の敷地である土地と預貯金という状況でした。

遺言の有無

遺言はありませんでした。

事案の問題点

不動産の評価

本件の唯一の不動産である土地には、相続人(夫)が所有する建物(被相続人と夫である相続人が生活していた自宅)が建っていました。この場合、遺産として存在する土地は、使用借権の負担が付いた底地ということになります(※3)。

使用借権付の底地は、土地上の建物が存在する限り、原則、自分で利用することはできませんし、賃貸借契約と違い賃料が支払われるわけでもないため、更地と比較した場合、大幅に評価が下がることが想定されますが、どの程度評価が下がるかについて一義的に明らかな基準があるわけではないため、この点が紛争化することが予想されました。

相続人が多数であること

本件の相続人は、5名であり、被相続人の夫は4名の相続人と協議をする必要がありました。一般的には、本件のようなケースでは、「配偶者である相続人」対「兄弟姉妹である相続人」という図式になることが多いため、兄弟姉妹の相続人の頭数が多くても兄弟姉妹間の意見が一致しており、遺産分割協議の負担はそれほど重くなりません。

ところが、本件では、兄弟姉妹の相続人がそれぞれ個別に協議をすることを希望し、遺産分割に対する意見がばらばらであったため、遺産分割協議を進めることが困難になっていました。遺産分割協議は全員の意見が一致しないと成立しません。そのため、苦労して話をまとめていっても、最後の一人が反対すると話が振り出しにもどってしまいます。相続人が2~3名であればなんとかなりますが、5人になると意見調整以前に話し合いの日時を決めるのも容易ではありません。

対応内容

不動産の評価への対応

使用借権付の底地については、地場の不動産業者に査定を依頼してもそもそも流通性がないという理由で査定額がつかない状況でした。他方で、流通性がない=評価ゼロとい考え方もやや乱暴ですので、相続税路線価を修正した更地評価を行い、借地権割合を差し引いた残額を底地価格として提案しました。

上記の評価は、ややイレギュラーな面もありますので、兄弟姉妹の相続人らのご理解を得るまで時間を要しましたが、現実の流通性がほぼ存在しない点も併せて説明し、最終的にはご了承いただきました。

相続人が多数であることへの対応

事案の問題点でご説明したように、本件は相続人が多く、意見もバラバラのため、一括で遺産分割協議をまとめるのは困難と判断し、各相続人と個別に協議を行い、協議が成立した相続人から相続分を譲渡してもらうとの方法をとりました(図4、図5)。

相続分譲渡は、遺産分割協議と異なり、1対1の協議で成立するため、相続人が多数の場合に有効ですし、相続分を譲渡する相続人としても、相続分を譲渡した時点で、相続手続から離脱できるため、遺産分割協議に延々と付き合う負担から解放されるメリットがあります。

最終的には、兄弟姉妹の相続人4名のうち3名から相続分の譲渡を受け、残り1名を相手方として遺産分割調停を申し立て、第2回期日で調停が成立しました(図6)。

弁護士小池のコメント

本件は遺産分割の手続との関係で相続人が多数であること、分割方法との関係で不動産の評価が問題になった事件でした。

両者は、別個の問題ですが、手続き進行が円滑にいかず、紛糾してしまうと、不動産の評価についての説明に対しても他の相続人から疑念を抱かれる恐れがあるため、進行・説明を丁寧に行うことが重要でした。

また、相手方相続人は、個別に交渉をしつつも他の相続人がどのような意見をもっているかを常に気にしており、情報交換をしている可能性もありました。このような場合は、下手に駆け引きをするのでなく、すべての相続人に平等な提案を行い、同趣旨の説明をすることで、提案に対する信頼感をもっていただくことが大切です。

本件でもこのような対応を心掛けて、無事解決いたしまいた。

本件は、分割方法等では深刻な意見対立はありませんでしたが、相続人が多数の案件の留意点・対応について参考になると思われることからご紹介いたします。

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