保佐人(長男)の使途不明金を不当利得として民事訴訟で返還させ、併せて、遺産分割協議を成立させた事例

1.事案の概要

(1)相続人等

被相続人の子供2名(長女、長男)

(2)遺産の内容

  • 自宅マンション
  • 預貯金約2600万円
  • 不当利得返還請求権(使途不明金)2000万円

(3)被相続人の生活状況

  • 平成20年3月頃まで一人暮らしをしており、これ以降介護施設に入所しました。
  • 平成20年5月、保佐開始、長男が保佐人(身上監護・財産管理)に就任しました。長女は保佐人の選任に反対していました。
  • 平成25年3月被相続人が亡くなり、相続が開始しました。

(4)遺産分割協議の経過

  • 平成25年4月、保佐人をしていた長男から、長女に対し、預貯金は長男がすべて取得し、不動産は売却して代金を折半するという遺産分割の提案がありました。
  • 長女は、遺産分割方法が不公平であるとして、変更を求めましたが、長男は、長女は被相続人から多額の援助(特別受益)があるとして、変更を拒絶しました。
  • 長女は、保佐開始時の預貯金額に比べて相続開始時の預貯金額が少額すぎるとしてこの点も説明を求めましたが長男は一切応じませんでした。

2.事案の問題点

(1)保佐開始後の使途不明金の存在

本件では、平成20年3月に被相続人が介護施設に入所し、同年5月に長男が保佐人に選任され、被相続人の預貯金を管理するようになっていたという事実経過があります。被相続人の施設費用(日常的な生活費、住居費、施設を介して注文した雑貨等の支払い)はすべて、被相続人の預金口座から引き落とされており、また、被相続人の手持ち現金で毎月10万円程度が保佐人から渡されているという状況でした。
しかし、相続開始後、保佐人の管理報告を確認したところ、具体的な使途がわからない出金や保佐人の子供への入学祝名目での金銭の贈与など使途が疑わしい支出が2000万円にも上りました。

(2)長男による特別受益(長女が金銭援助を受けていた)の主張

長男は、長女に対し、長女が生活費や自分の息子の学費について、被相続人から援助を受けていたと主張していました。長男が問題とした援助は、お年玉など小遣い程度の支出から、証拠上の根拠のないものまでが含まれており到底特別受益とは評価し難いものでした。

(3)裁判手続の選択

本件は、預貯金と不動産の分割については、遺産分割調停、使途不明金については不当利得返還請求訴訟(民事訴訟)を行う必要がある事案であり、裁判手続をどのように選択していくかについて検討を要する事案でした。

3.対応内容

(1)保佐人であった長男による使途不明金の問題について

長男は、保佐人として家庭裁判所に管理報告を行っており、使途不明金などは存在しないと強く反論してきました。しかし、長男は、保佐人としての支出について、家庭裁判所から不当な支出ではないかとの指摘を受けており、管理報告をしたことをもって支出が政党とは言えない旨を反論し、そもそも、被相続人の生活費等は、毎月引き落とされている施設費用と手許現金として受け取っている10万円で十分賄えること、他方で、使途不明と指摘している出金は長男が保佐人として行っている以上、合理的な使途を説明する責任がある旨指摘し、最終的に1200万円の使途不明金を前提に和解で解決しました。

(2)長男による特別受益の主張について

長男からなされていた各種特別受益については、そもそも証拠上の裏付けがないことや親族間の扶養の趣旨に過ぎない旨の反論をし、最終的には不当利得返還請求訴訟(使途不明金)の和解で遺産分割についても一括解決しました。

(3)本件は、遺産分割調停と不当利得返還請求訴訟の二つの裁判手続を行うことが予想される事案でしたが、遺産分割は比較的シンプルな事案でしたので、不当利得返還請求訴訟を先行させ、その和解の際に遺産分割も一括で解決をしました。

4.弁護士小池のコメント

本件は、不当利得返還請求訴訟を先行させて、その和解の際、遺産分割をまとめて解決することができた点で、類似の事案解決に参考になると思います。
また、近年、後見人や保佐人の財産の使い込みが問題になっていることからもわかるように、後見人や保佐人に対する裁判所の監督が十分でないケースもあります。このようなことから、長女側では、本件では保佐人が家庭裁判所に対して管理報告を上げているという反論とはそれほど重視しませんでした。
更に、特別受益についても、長男は、金額の多寡や趣旨を問わず、贈与や金銭の援助と思しきものはすべて特別受益として主張していましたが、特別受益は遺産の前渡しにあたるものに限定されているため、この点を踏まえた検証が重要になる事案でした。

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