不動産評価額で不調となり換価分割の方向で審判移行したのち、代償分割の合意が成立した事例

解決事例ダイジェスト

☑ 不動産評価の交渉であえて換価分割を主張

☑ ☑審判移行後も粘り強く交渉を続けて代償分割で合意

☑ ☑葬儀費用等の支出も含めて調停で解決

 

事案の概要

(1)相続関係

  • 被相続人:母
  • 相続人:長女(依頼者)、長男

遺産分割調停中に長男が死亡し、長男の配偶者が調停を承継

(2)遺産の内容

  • 預貯金1300万円
  • 土地建物(実家)
  • 祭祀財産:仏壇等

(3)遺言の有無:なし

事案の問題点と対応内容

(1)不動産評価に関する交渉

本件は遺言が存在しないため、法定相続分が1/2という事案でした。依頼者は土地建物の取得を希望していいましたが、そのためには不動産の評価額を代償取得が可能な程度にする必要がありました。

この土地建物は比較的条件が良く、長男側からは3000万円超の評価額が主張されており、このままでは代償金の支払いが困難な状況でした。

そこで、土地建物関係資料を精査したところ、土地の一部に隣地の構築物が越境している等の事情があり、実際に利用可能な面積は測量した面積よりも狭いという事情が判明しました。

このような事情もおりまぜて、不動産の評価額について交渉を重ねましたが、合意に至ることはできませんでした。

(2)調停不成立→審判移行で換価分割を求める意図

上記(1)のとおり、不動産の評価額については意見が対立し、この段階では長男側からの譲歩も見込めず、他方で、依頼者としても代償金の原資には限りがある状況でした。

交渉過程での長男側の対応を見ると、土地建物を取得する考えはなく、金銭取得で一貫していることから、譲渡所得税を織り込んだ減額交渉にシフトしました。もっとも、単純に代償金算定の関係で譲渡所得税分を減額して欲しいと申し入れても長男側は応じないと思われました。

そこで、代償分割の主張をあきらめ、換価分割(共同売却)の方向で審判に移行し、長男側に譲渡所得税の負担を現実問題として意識させる方向に舵をきりました。

審判移行後にも、一定の提案をしつつ交渉を続けた結果、代償分割の合意が成立し、依頼者は土地建物を取得することができました。

(3)葬儀費用・祭祀財産の処理

本件では遺産の建物内に立派な仏壇等の祭祀財産が保管されていました。長男が亡くなっている関係で、長男の配偶者は祭祀承継の意思はなく、依頼者が祭祀財産を承継することになりました。この際、併せて、葬儀費用の清算の趣旨を含めて代償金を算定することを交渉過程で確認し、調停条項にもその趣旨の条項を盛り込みました。

弁護士小池のコメント

本件では、不動産評価額の交渉がかなり難航したため、思い切って換価分割に主張を変更した結果、長男側の譲歩を引き出すことができたという点で、目論見があたった事例と言えます。もっとも、仮に、長男側が換価分割を受け容れた場合、依頼者としては取得を希望していた土地建物を売却されてしまうというリスクを負うことになるため、ある意味で賭けの要素がありましたが、結果的には賭けに勝ったと言えるかもしれません。

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