未精算となっていたアパートの賃料を民事訴訟で早期に回収した事例

解決事例ダイジェスト

☑ 裁判外の交渉により賃料収支の主張を明確化

☑ ☑交渉が行き詰まった場合は速やかに民事訴訟に移行

☑ ☑未分割となっていた遺産も付随的に処理

 

事案の概要

(1)相続関係

  • 被相続人:父
  • 相続人:長男(依頼者)、二男

(2)遺産の内容

  • アパート(遺産)の賃料【期間:相続開始~アパートの遺産分割まで】

(3)遺言の有無:なし

事案の問題点と対応内容

(1)アパートの賃料が未精算となった経緯

遺産にアパートが含まれる場合、相続開始後も賃料は入金するため、便宜上、特定の相続人が賃料を受領するなどアパートの管理をする場合があります。本件においても、二男が被相続人と同居しており、アパートが二男の自 宅の隣であったという事情から、二男が賃料の受領を含めたアパートの管理を行っていました。

(2)アパート賃料の収支を明確化するための交渉

上記の経緯で、二男がアパートの管理を行っていましたが、アパート等の不動産の遺産分割で揉めたことが影響し、依頼者にはアパートの収支が開示されておりませんでした。

そこで、当職が代理人に就任し、二男側に収支の開示を求めると共に、管理会社に賃料の入金状況や管理費用の詳細を照会しました。

その後、二男側も弁護士を代理人に選任したことから、代理人間の交渉で、賃料の収支が明らかになってきましたが、どの範囲の支出を妥当な経費とみとめるかという点が争点となり、交渉が停滞してしまいました。

(3)早期解決のために民事訴訟へ移行

上記(2)で交渉が停滞した時点では、賃料の収支の事実関係は明らかになっており、そのうちどの程度の経費を認めるかという評価面が主たる争点になっていたことから、当職としては、このまま交渉を継続するよりも裁判所にステージを移して、訴訟手続・交渉の両面で対応した方が早期の解決が見込めると判断しました。

以上を踏まえて、依頼者は民事訴訟(保管金引渡し請求訴訟)を提起し、最終的に裁判所の関与のもと和解が成立しました。

(4)未分割財産の処理

本件はアパートの賃料の清算を目的としておりましたが、よくよく事情を聞いてみると、遺産分割が未了の財産が若干存在することがわかりました。この財産はほぼ価値がない土地のため、長男・二男も積極的に取得する意思はないことから、交渉の対象からはずされていたようです。

もっとも、未分割で放置すると後々面倒になる可能性があることから、この機に賃料の清算と併せて遺産分割の合意をすることとしました。

本件は民事訴訟手続でしたが、遺産分割は家庭裁判所の管轄になるため、民事訴訟の和解では遺産分割ができません。そこで、裁判所で賃料清算の和解をする手続と並行して、裁判外で遺産分割協議書の取り交わしをして処理しました。

弁護士小池のコメント

本件は遺産分割協議で処理がされなかったアパート賃料の清算を行った事例です。遺産分割に代理人弁護士が関与している場合であれば、遺産分割の合意の際に賃料の清算も行うのが通例ですが、本件は当事者同士で揉めに揉めながら何とか不動産の遺産分割を行ったという経緯があるため、賃料清算までは処理できなかったようです。当事者間で協議をした場合、このように一部の問題を積み残してしまうことは珍しくありません。

また、本件では、収支に事実関係が明らかになった後、どの範囲を経費として認めるかが争点になりました。賃料を保管している二男側からすれば、私的な支出も含めて経費の範囲が広くなれば、長男に分配する賃料額が少なくなるため、争点化しやすい部分です。そこで、本件では経費の評価の部分については、第三者である裁判所の判断を介入させるため、早期に民事訴訟に移行しました。結果的にこの対応が早期解決につながったと思われます。

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