相続により共有となった貸地を借地権者に共同で売却した事例

解決事例ダイジェスト

☑ 共有者ごとに代理人弁護士が就き連携して手続を進行

☑ 借地非訟事件を利用して売却の交渉を実行

☑ 底地評価に関する不当な意見に対し、鑑定意見書を提出

 

事案の概要

(1)権利関係

  • 売却対象となった土地(以下「本件土地」といいます)を親族3名で共有
  • 本件土地には借地権が設定されており、アパート3棟が存在

(2)交渉の経緯

本件土地が相続で親族3名の共有になったところ、ほどなくして借地権者が亡くなり、その相続人からアパート3棟を解体して新たにアパートを建築したいとの申し入れがあり、借地非訟事件が申し立てられました。

事案の問題点と対応内容

(1)本件土地が共有となっている点

本件土地は過去の相続により3名の共有となっており、また、過去の相続において紛争化したという経緯があるため、ただでさえ煩雑な共有不動産の管理が輪をかけて煩雑な状態になっていました。また、借地非訟事件を申し立てられた時点で、共有者らは、底地を売却することも選択肢としていましたが、借地権が設定されているのは、1筆の土地の一部であるため、 底地を売却するには、借地権の範囲を特定し、これに合わせて本件土地を分筆する必要がありました。

本件の本格的な交渉が始まる前の段階でこれらの問題が存在していたため、共有者は自分で対応することはせず、直ちに弁護士を代理人にして交渉を任せることにしました。

(2)交渉の土俵として非訟事件手続を利用

当初、借地権者側からは、借地権を維持したまま再築を許可して欲しいとの申し入れがありました。共有者らとしては、底地の売却を志向していたため、再築許可には消極的な対応となっていたところ、借地権者側から裁判所に対して再築許可を求める非訟事件の申し立てがされ、本件が裁判手続きで審理されることになりました。

裁判手続きのテーマは再築許可ですが、借地に関する事件では、代替案も幅広く検討されることが多いため、本件でも再築許可というテーマにしばられず、共有者側から底地の売却という提案をし、裁判所で話合いを進めました。

(3)本件のテーマである再築許可や付随的に協議している底地の売買は、いずれにしても土地の評価額を算出するというプロセスが必要になります。

そして、この部分が固まらないとなかなか協議が前に進んでいきません。

そこで、鑑定委員会に本件土地の評価に関する意見書を出してもらうことになりました。遺産分割調停や遺留分侵害額請求の裁判手続では、不動産の評価が紛争化した場合は、当事者が費用を負担して鑑定人を選任してもらう必要があります。他方で、借地非訟事件の鑑定委員会が意見書を作成する場合、当事者には不動産鑑定のような費用負担がありません。手続が違うからと言えばそれまでですが、遺産分割・遺留分の場合と比較すると非常にうらやましい制度です。

(4)ところが、いざ鑑定委員会の意見書が提出されると、周辺相場に比較して2分の1以下の低廉な評価額が示されており、共有者側に著しく不利な内容になっていました。

そこで、共有者側は、異例ではありますが、鑑定委員会の意見書に反論するため、不動産鑑定士に依頼して鑑定意見書を作成してもらい、不動産評価額(底地の評価額)に関する反論を行いました。

(5)その後、共有者側が提出した鑑定意見書の金額も考慮してさらに交渉を重ねた後、底地の売却価額が決定し、最終的に底地を借地権者に売却する方法で本件は解決しました。

弁護士小池のコメント

本件は、「共有の土地を共同で借地権者に売却した」とまとめてしまえば簡単なのですが、その過程では、売買代金を始めとする売却条件の意思統一、土地の分筆に伴う土地家屋調査士との事務連絡、売買契約書の取り交わし、代金決済の段取り等の細々とした手続があるため、当事者間で処理することはほぼ不可能と思われる事案でした。

その意味では、事案の初期段階で早々に弁護士を代理人にした共有者の方々の対応がその後の進行に大きく影響したと思われます。

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