長男側の家督相続的要求に対して弁護士が介入して遺産分割を成立させた事例

1.事案の概要

(1)相続関係

 本件の被相続人は相談者3名の父親でした。被相続人には、長男、二男、長女3人の相続人がおり、長女が弊所に対応を依頼されました。

(2)遺産の内容

 本件は、相続税の申告・納税が済んでから1年以上が経過した時点で弊所に相談があり、遺産の内容はおおむね相続税申告書で把握できる事案でした。

 

土地

6筆

うち2筆は実家の敷地として、その他の4筆は農地でした。

建物

1棟

自宅建物です。

預貯金

約4000万円

 

 

 

(3)遺言の有無

   遺言はありませんでした。

 

2.事案の問題点と対応内容

(1)遺産分割方法に関する基本的な考え方の齟齬

 

 本件では、弊所にご依頼をいただくまでの間、約2年間にわたり、断続的に遺産分割協議が行われたものの、相続人間で意見が一致せず、遺産分割協議が進む機運もないという状況でした。

 

 このような状況が生じた原因は、遺産分割に関する長男・二男側と長女側の基本的な発想がことなることにありました。

 

長男・二男側は、いわゆる家督相続的な発想により、長男がすべての遺産を相続し、長女に預貯金から2000万円を支払うという提案をしておりました。他方で、長女側は、若干の譲歩はありうるものの、基本的には法定相続分による分割を希望しておりました。

 

このように遺産分割についての根本的な考えが食い違い状況で協議をしていたため、一行に解決の糸口が見えないという状況でした。

 

そこで、弊所では、受任後、早い時期に長男・二男と面談し、長男・二男側が希望するような家督相続的な遺産分割に応じる意思はないことを伝え、法定相続分を基礎とする遺産分割協が可能か否かを確認しました。そうしたところ、長男・二男側は、遺産分割方法に関する希望を変更する意思はないとの回答であったため、交渉を打ち切り、遺産分割調停を申し立てました。

 

遺産分割調停においても長男・二男側は、家督相続的な発想の主張に固執していたため、遺産分割審判により法定相続分を基礎とした代償分割とする判断が示されました。なお、長男・二男側は、審判に対して抗告しましたが抗告審でも原審の判断が維持されました。

 

 (2)農地の評価額

 

 本件の遺産に含まれる土地は、全て市街化調整区域にある土地でした。

 

 実家の敷地については、宅地であることから、一定の制約はあるものの、売却等の換価に問題はなく、評価額も比較的容易に算定できる不動産でした。

 

 他方、実家の敷地以外の土地は全て農地であったことから、宅地等に比べて売却等の換価可能性が未知数であり、評価額の確定が争点になりました。

 

 この点に関し、長男・二男側は、当該農地は市街化調整区域にある農地であるから、流通性等が低く、評価額は低いとして、相続税申告評価額を遺産分割における時価と主張しました。

 

 本件の農地は、市街化区域と隣接しており、市街化調整区域の中では最も市街化区域よりに所在している状況でした。また、本件の農地の周辺は宅地化が進んでいる状況もありました。そこで、弊所で調査をしたところ、比較的農地転用及び開発許可を取得することが比較的容易な土地であることが判明したことから、長女側は、相続税申告評価は時価を下回っているとして、より高額な評価を主張しました。

 

 このような経過で、農地の評価額が争点化しましたが、これらは利用単位でも3物件になり、実家の敷地も含めて不動産鑑定を行うこととなった場合、合計4件の鑑定が必要になる可能性がありました。この場合、鑑定費用は100万円以上かかることが見込まれるため、費用負担の観点からは、なるべく鑑定は避けたいという状況でした。

 

 そこで、裁判所を交えて協議を行った結果、時価と乖離が発生することが見込まれる農地にはおおむね法定相続分で取得する内容で分割希望を出すことを前提に相続税申告評価を採用することになりました。

 

(3)代償金の支払能力の立証

 

 本件の解決については、遺産分割審判により、実家の土地は長男が代償取得し手代償金を長女に支払い、農地は各相続人が概ね法定相続分で取得するとの判断が示されました。

 

 代償分割においては、審判において代償金の支払能力があることを明らかにする必要があるところ、審判ではこの点が明示的には判断されておりませんでした。

 

 そこで、分割方法についての不服と併せて、代償金の支払能力が立証されていない点を理由として抗告し、抗告審において長男側から代償金の支払原資が明示されることとなりました。

 

(4)最終的な解決

 

 本件は家庭裁判所による遺産分割審判に対して双方当事者から抗告が申し立てられ、高等裁判所において再度審理がなされました。抗告審においても和解の協議がされましたが、不調となり、抗告審でも原審の判断が支持されました。

 

3.弁護士小池のコメント

 

 本件は長男・二男側が家督相続的な発想にこだわったことから、紛争化した事案でした。現在の民法では、家督相続は採用されておらず、法律上の根拠はありませんが、農家や資産家の家系では家督相続的な発想は根強く残っており、紛争の原因となることが珍しくありません。

 

 この様な場合、当事者間で話し合いで家督相続的な発想を変えることは困難ですので、早期に遺産分割調停・審判に移行することが結果的に迅速な解決に繋がります。本件でも、長男・二男側は、調停・審判でも家督相続にこだわったことから、最終的に裁判所が審判・決定により判断を示すこととまりました。

 

 農地の評価に関しては、市街化調整区域の農地=評価が低いとみられがちですが、市街化調整区域でも市街化区域に近く宅地化が進んでいる地域から周辺一帯が農地利用されている地域まで状況は区々であり、慎重に調査を進める必要があります。本件の農地は、市街化区域に隣接しており、ほぼ市街化区域と変わらない状況となっていたことから、市街化調整区域の農地としては、高額の評価が見込まれることから、分割方法を決定する際に重要な要素となりました。

 

 他方、市街化調整区域は、その利用のためには農地転用許可や開発許可を要するため、市街化区域の土地程自由に売買や利用ができないという弱点もあります。市街化調整区域の農地を取得したものの、農業を継続する予定がない場合は、取得後の利用や売却を想定して準備しておくことも重要となります。

 

 本件は家督相続的な分割方法の主張という典型的な主張と、農地の評価において特徴的な論点を含んでおり、農地の相続の事案の参考になると思われることから、ご紹介いたします。

 

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