弁護士が遺産調査と交渉を代理して遺産分割を早期解決した事例

1.解決事例ダイジェスト

☑ 遺産分割前の預貯金の払戻し制度(民法909条の2)を利用して弁護士費用(着手金)を確保

☑ 交渉により遺産分割を早期解決

☑ 預金解約・代償金の支払まで弁護士が代理して実行 

2.事案の概要

(1)相続関係

    ・被相続人:母

 ・相続人:長男及び二男

(2)遺産の内容

不動産

被相続人の自宅土地建物

預貯金

3金融機関(5口座)

その他

貸金庫契約

 

(3)遺言の有無

   遺言はありませんでした。

(4)ご相談の経緯

本件の相続人である長男と二男は、今回の相続問題が発生する以前から関係が良くありませんでした。相続開始後、長男が二男に遺産の内容を確認したところ、不自然に預金の額が少ない説明であり、その後、二男の説明が変遷したことから、ご長男が弁護士に対応を依頼されました。

3.事案の問題点と対応内容

(1)弁護士費用の確保

相続案件では、弁護士に依頼したいが着手金の支払いがネックになる場合が少なくありません。遺産が入ってくれば支払うのは容易なんですが、依頼時に支払うのは厳しいという状態です。

他方で、弁護士費用(着手金)は、依頼を受けた際(着手時)に受け取るから着手金であって、遺産が入ってから支払いということでは意味がありません。

本件でも依頼時の費用負担を可能な限り軽くしたいとのご要望があったことから、改正相続法で新設された遺産分割前の預貯金の払戻し(民法909条の2)により、預金の一部払戻しを行い、着手金の原資を確保しました。

 

(2)正確な遺産内容の把握

ご相談の経緯にも記載したとおり、本件では二男側からの預金についての説明が変遷しており、また、被相続人の晩年の財産管理は二男が行っていたことから、遺産(特に預金)の正確な情報が得られていませんでした。

そこで、まずは、弁護士が預貯金の残高証明・取引明細の取り寄せ、不動産の名寄せの取り寄せをそれぞれ行い、遺産の詳細を把握しました。なお、上記(1)のとおり、本件では遺産分割前の預貯金の払戻しを行いましたので、この手続と預金の残高・取引明細の調査は同時に行いました。

 

(3)寄与分の主張に対する対応

遺産調査完了後、二男の代理人弁護士と遺産分割協議を行いました。二男側からは、被相続人の晩年の介護等について療養看護型の寄与分の主張がなされました。

二男側の寄与分の主張額は、実務的には認めがたいものでしたが、他方で、晩年の被相続人の心身の状況からすると一定額の寄与分が認められる可能性もありました。

寄与分の算定については、調停・審判上は算定基準が確立しておりますが、この基準に則って寄与分について詳細な主張・反論を行った場合、交渉が長引きく可能性があり、また、主張・反論を繰り返す過程で当事者間の対立が深刻化し、事案が長期化するリスクがありました。

そこで、事案の早期解決を重視して、二男の寄与分に相当するものとして、自宅不動産の取得を認めることとしました。

 

(4)解決時期の見極め

本件では、二男側の寄与分主張に一定の配慮をして自宅不動産の取得をみとめ、その他の預貯金を折半するという遺産分割をしており、遺産評価ベースでみると、長男(依頼者)は法定相続分を下回る結果となっています。

もっとも、自宅不動産は老朽化の進んだ木造建物のため、売却の際は解体費用がかかること、土地自体もそれほど高額な売却は望めないこと、自宅購入時の資料が手元になく売却の際に譲渡所得税が発生する可能性があったことからすると、自宅不動産を一部取得しても、手取り額は遺産全体の額からすると僅少にとどまると予想されました。

以上を踏まえ、早期解決の価値を重視して、上記のような遺産分割方法で合意しました。

 

(5)相続手続の実行(預金解約&貸金金庫解約)

本件では、相続手続を簡素にするため、一旦、預貯金は全額長男が取得し、その半額を代償金として支払うとの分割方法(代償分割)を採用しました。この場合、預金解約の手続は長男の代理人弁護士が単独で行えるため、手続の進行が迅速になります。

もっとも、本件では貸金庫契約も存在し、貸金を開扉する際は、通常、全相続人又はその代理人の立ち合いが必要になるため、貸金庫の開扉は長男・二男の代理人が立ち会いました。

 

4.弁護士小池のコメント

本件は遺産の内容は比較的シンプルなため、寄与分の主張を上手く処理すれば早期解決が可能となる事案でした。実際、寄与分の法的な金額にはこだわらず、自宅不動産については譲歩して二男の単独取得を認めるとしたことにより、早期解決が実現したと言えます。この点は、二男との対立感情に捕らわれずに早期解決という時間価値を優先した依頼者(長男)の判断力によるとこころが大きいと思われます。

また、相続案件は遺産分割協議が成立してからの相続手続(預金解約⇒解約預金の分配)に思いのほか時間がかかります。

ここで手間取ってしまうと早期解決のための譲歩の価値が下がってしまうため、遺産分割協議の成立から預貯金の相続手続までの手間を減らすため代償分割を選択し、手続も迅速に進めました。

預金解約のみの場合は、弁護士のみが金融機関の窓口に赴けば手続きが可能ですが、貸金庫は上記のとおり双方代理人(又は本人)が立ち会うことになります。そのため、貸金庫含む相続手続の場合は、相手方代理人の予定も事前に確保しておかないと手続が遅延してしまいます。些事かもしれませんが注意を要する点です。

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