日付に誤記がある自筆証書遺言を有効とした事例(最判昭和52年11月21日)
最高裁の判断
『自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。』
相続弁護士のコメント
本件は日付の記載を誤っていても、実際の作成日を認定できる場合は自筆証書遺言は有効と判断した事例です。第1審が認定した事実関係をみてみると『本件遺言書に、昭和四七年に初めて知り合った被告内藤を遺言執行者に指定する旨記載されている事実(前記二)及び被告内藤はもと判事であって昭和三〇年六月一八日退官したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、本件遺言書には「弁護士内藤文質」と記載されている事実(前同)によると、本件遺言書の作成日附として記載されている「昭和二十八年」は「昭和四十八年」の書き損じであることが明白である。』と認定されており、具体的に「二」が「四」の誤記であることが明示されており、本件はここまで認定できる場合の救済的な判断と言えます。
遺言の作成日は、遺言者の遺言能力判断の基準となり、他の遺言との前後関係を決するために要求されています。そのため、日付の誤記が明らかであるものの、実際の作成日が認定できない場合は、明文で日付が要求されていること及び上記趣旨に照らし自筆証書遺言は無効と考えることになるでしょう。