遺産分割により遺産を取得した相続人と第三者の関係

更新履歴

2015年 9月12日 記事公開(注)2019年の相続法改正前の記事です。
2021年 1月  5日  「弁護士小池のコメント」を追加

遺産分割により不動産を取得したことを共同相続人の債権者に主張するには登記が必要ですか

私(甲)は、遺産分割協議に基づいて土地Aを取得しました。ところが、私が土地Aを取得した旨の登記をする前に、共同相続人であった乙の債権者(丙)が土地Aの乙の法定相続分であった持分2分の1について差押さえをしました。
土地Aは私が遺産分割協議により取得しているので丙の差押えは無効ではないでしょうか?

遺産分割による不動産の取得を共同相続人の債権者に主張するには登記が必要です

本件では、丙が甲に優先しますので、差押えは有効です。
遺産分割協議により、法定相続分と異なる内容の権利関係になった場合、法定相続分と異なる権利の取得・喪失に関しては、登記をしなければ、遺産分割後、相続登記前に権利を取得した第三者に対して、法定相続分を超える部分の権利取得を主張することはできません。

遺産分割の効力は、相続開始時に遡及するとされていますが(民法909条)、これは法的な擬制に過ぎず、第三者との関係では、いったん法定相続分で帰属した遺産が遺産分割協議により新たな変更を生じる実質上ことならないと考えられます。

そこで、遺産分割により法定相続分と異なる権利関係になった場合にも民法177条の適用があり、遺産分割の結果を第三者に対抗するには、その旨の登記が必要になります。

弁護士小池のコメント

参考裁判例は、相続法改正前の判断ですが、改正により影響はないものと思われます。

関連する論点として、遺言により法定相続分と異なる相続分が定められた場合(特定承継遺言及び相続分の指定の場合)の第三者との関係があります。

この論点に関し、登記不要としていた判例法理(最判平成5年7月19日、最判平成14年6月10日)は、相続法改正で新設された民法899条の2により修正されておりますのでご注意ください。

参考裁判例 最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずるものではあるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいつたん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法一七七条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である。論旨は、遺産分割の効力も相続放棄の効力と同様に解すべきであるという。しかし、民法九〇九条但書の規定によれば、遺産分割は第三者の権利を害することができないものとされ、その限度で分割の遡及効は制限されているのであつて、その点において、絶対的に遡及効を生ずる相続放棄とは、同一に論じえないものというべきである。遺産分割についての右規定の趣旨は、相続開始後遺産分割前に相続財産に対し第三者が利害関係を有するにいたることが少なくなく、分割により右第三者の地位を覆えすことは法律関係の安定を害するため、これを保護するよう要請されるというところにあるものと解され、他方、相続放棄については、これが相続開始後短期間にのみ可能であり、かつ、相続財産に対する処分行為があれば放棄は許されなくなるため、右のような第三者の出現を顧慮する余地は比較的乏しいものと考えられるのであつて、両者の効力に差別を設けることにも合理的理由が認められるのである。そして、さらに、遺産分割後においても、分割前の状態における共同相続の外観を信頼して、相続人の持分につき第三者が権利を取得することは、相続放棄の場合に比して、多く予想されるところであつて、このような第三者をも保護すべき要請は、分割前に利害関係を有するにいたつた第三者を保護すべき前示の要請と同様に認められるのであり、したがつて、分割後の第三者に対する関係においては、分割により新たな物権変動を生じたものと同視し、分割につき対抗要件を必要とするものと解する理由があるといわなくてはならない。

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