共有持分権が共同相続人以外に譲渡された場合の分割手続

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2015年9月13日 記事公開
2021年1月  5日 「弁護士小池のコメント」追加

相続人から共同相続人以外の第三者が共有持分権を譲り受けた場合、共有関係を解消するにはどうすればいいですか

3年前に父がなくなり相続が開始しました。相続人は、私と兄ですが、兄とは遺産分割協議が一向にすすまないため、相続財産のうち自宅土地建物の共有持分2分の1を祖父に贈与し、祖父は登記を済ませました。祖父が自宅土地建物の分割を求めるにはどのような手続をとればいいのでしょうか?

法定相続人から共同相続人以外の第三者が共有持分権を譲り受けた場合、共有関係を解消するには共有物分割の手続を行う必要があります

自宅土地建物の共有持分2分の1を譲りうけた祖父は、相談者の兄に対し共有物分割訴訟という手続で分割を求めることができます。なお、遺産分割手続をとることはできません。

判例上、遺産分割前の相続財産に関する法律関係は、民法249条以下の共有と同様とされています。そして、相続財産の一部である共有持分権が相続人以外の第三者に譲渡された場合、その共有持分権は相続財産から逸出することになりますので、理論上、遺産分割調停・審判による必然性がありません。

また、遺産調停・審判の制度は、相続財産全体の価値を前提に民法906条所定の基準にしたがって相続財産を分割するものですが、特定の不動産の共有関係を解消することを目的として遺産分割調停・審判を利用することは制度趣旨に適いません。

そのため、相続財産に含まれる特定不動産の共有持分権が第三者に譲渡された場合の共有関係の解消は、原則的な制度である共有物分割手続によることになります。

弁護士小池のコメント

共有持分の譲渡と類似するものとして相続分の譲渡があります。

共有持分の譲渡は被相続人の遺産に含まれる特定の不動産に対する共有持分権を譲渡するものであるのに対し、相続分の譲渡は被相続人の遺産全体に対して相続人が有する割合的持分を譲渡するものであるという点で性質が異なります。

この性質の違いを反映して、共有持分の譲渡を受けた場合の共有関係の解消手続は、共有持分譲渡の対象となった不動産に関する共有物分割手続となり、相続分の譲渡の遺産共有関係の解消手続は遺産全体を対象とする遺産分割手続になります。

共有持分を譲渡した場合でも相続税の納税義務はあり、譲渡所得税が発生することもありますので、事前に税務関係の確認が必要になります。

参考裁判例等 最判50年11月7日民集29巻10号1525頁

共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法二四九条以下に規定する共有としての性質を有すると解するのが相当であつて(最高裁昭和二八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九三頁参照)、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は、適法にその権利を取得することができ(最高裁昭和三五年(オ)第一一九七号同三八年二月二二日第二小法廷判決・民集一七巻一号二三五頁参照)、他の共同相続人とともに右不動産を共同所有する関係にたつが、右共同所有関係が民法二四九条以下の共有としての性質を有するものであることはいうまでもない。そして、第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は、民法九〇七条に基づく遺産分割審判ではなく、民法二五八条に基づく共有物分割訴訟であると解するのが相当である。けだし、共同相続人の一人が特定不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合、当該譲渡部分は遺産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから、第三者がその譲り受けた持分権に基づいてする分割手続を遺産分割審判としなければならないものではない。のみならず、遺産分割審判は、遺産全体の価値を総合的に把握し、これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法九〇六条所定の基準に従つて分割するこ
とを目的とするものであるから、本来共同相続人という身分関係にある者または包括受遺者等相続人と同視しうる関係にある者の申立に基づき、これらの者を当事者とし、原則として遺産の全部について進められるべきものである
ところ、第三者が共同所有関係の解消を求める手続を遺産分割審判とした場合には、第三者の権利保護のためには第三者にも遺産分割の申立権を与え、かつ、同人を当事者として手続に関与させることが必要となるが、共同相続人に対して全遺産を対象とし前叙の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであつて、その方法も多様であるのに対し、第三者に対しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである等、それぞれ分割の対象、基準及び方法を異にするから、これらはかならずしも同一手続によつて処理されることを必要とするものでも、またこれを適当とするものでもなく、さらに、第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与えることは前叙遺産分割の本旨にそわず、同審判手続を複雑にし、共同相続人側に手続上の負担をかけることになるうえ、第三者に対しても、その取得した権利とはなんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。
これに対して、共有物分割訴訟は対象物を当該不動産に限定するものであるから、第三者の分割目的を達成するために適切であるということができるうえ、当該不動産のうち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は、なお遺産分割の対象とされるべきものであり、第三者が右持分権に基づいて当該不動産につき提起した共有物分割訴訟は、ひつきよう、当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割することを目的とするものであつて、右分割判決によつて共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから、右分割判決が共同相続人の有する遺産分割上の権利を害することはないということができる。
このような両手続の目的、性質等を対比し、かつ、第三者と共同相続人の利益の調和をはかるとの見地からすれば、本件分割手続としては共有物分割訴訟をもつて相当とすべきである。

 

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