相続分譲渡と贈与税-共同相続人間の譲渡-

相続分を譲渡した場合贈与税が課税されますか

現在、遺産分割協議をしていますが(相続税の申告期限は経過していません)、私は、相続分を弟に譲ろうと思います。この場合、相続分の譲渡が贈与になり、贈与税が課されるのではないかと心配です。弟に相続分を譲渡する場合の課税関係を教えてください。
 また、私が相続分を譲渡した後、弟と他の相続人の遺産分割協議がまとまらなかった場合、私は申告期限に相続税の申告をしなければなりませんか?

贈与税が課税されることはありません

結論としては、弟さんに相続分を譲渡することについて、贈与税が課されることはありません。相続分を譲渡することにより遺産を相続しないことは実質的には、遺産分割協議により遺産を相続しないとの結果になった場合と同じだからです。
 次に後段の相続税の申告をする必要があるか否かについてですが、相続分を無償で譲渡した場合でも相続税の申告自体は必要です。もっとも、相続税法55条にいう『相続分』には共同相続人間で譲渡された相続分も含まれると回されていますので、相続分をゼロとして申告することになります。なお、余談ですが、相続分がゼロの場合でも相続税の申告を税理士に依頼すれば税理士費用が発生しますので、この費用は相続分の譲受人の弟さんが負担するように約束をしておくと良いでしょう。
 仮に、相続分を有償で譲渡した場合、譲渡代金を相続により取得した財産として申告することになります(代償分割により金銭を取得した場合と同じイメージです)。

参考裁判例

最高裁判所平成5年5月28日

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、本件再更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に違法はないとした原審の判断は、相続税法55条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれるとした点を含め、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。所論違憲の主張は、原審の認定しない事実を前提とするものであって、失当である。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

東京地方裁判所昭和62年10月26日

3 相続分の譲渡と相続税の課税価格
(一)相続税法一一条、一一条の二、三二条、三五条三項等の規定から考えると、同法は、各共同相続人が現実に取得した財産の価格に応じて相続税を課することを原則(以下「相続税の課税原則」という。)としているものと解される。
ところで、同法五五条は、遺産の全部又は一部が未分割の場合には、未分割財産については、各共同相続人が民法(九〇四条の二を除く。)の規定による相続分に従つて未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する旨を定めている。遺産の分割をする時期については、法律上期間の制限がないため、遺産の分割が完了するのを待つて相続税の課税価格を計算しなければならないとすると、相続税法二七条一項の申告期限までには課税価格の計算ができなかつたり、更正等の除斥期間との関係で課税ができなくなる事態が生ずることにもなりかねないことなどから、同法五五条は、遺産分割が完了しない場合の課税価格の計算方法を定めたものである。そして、同条は、遺産の全部又は一部が未だ分割されていない時点では、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、未分割の個々の遺産について具体的な権利を主張することはできないが、未分割遺産全体について自己の相続分の割合に応じた持分的な権利を主張できることを踏えて、相続税の申告又は課税をする場合において、遺産の全部又は一部が分割されていないときは、未分割の遺産については、前述の持分的な権利の割合に従つて右遺産を取得したものとして課税価格を計算するものとしているのである。そうすると、同条の規定するところは、前述の相続税の課税原則そのものではないが、未分割の遺産が存在することを前提とする限り、右原則に最も近似するものであつて、基本的には、右原則と同様のものと評価することができる。以上述べたところに鑑みると、同条にいう相続分とは、民法九〇〇条ないし九〇四条の規定により定まる相続分(以下「法定等相続分」という。)のみをいうものではなく、共同相続人間で相続分の譲渡があつた場合における当該譲渡の結果定まる相続分(譲渡人については法定等相続分から譲渡した相続分を控除したものを、譲受人については法定等相続分に譲り受けた相続分を加えたもの)も含まれるものと解するのが相当である。
(二) ところで、相続税法五五条にいう「相続分の割合」とは、共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張することができる持分的な権利の割合をいうものと解するのが相当である。そして、遺産の一部の分割がされ、残余が未分割である場合には、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、遺産全体に対する自己の相続分に応じた価格相当分から、既に分割を受けた遺産の価格を控除した価格相当分についてその権利を主張することができるものと解される。

 

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