相続分譲渡の課税関係-法人への譲渡-

法人に相続分を譲渡した場合どのような課税がされますか

昨年、父が亡くなり相続が開始しましたが私個人としては、相続により遺産を取得することは望んでいません。そこで、私の資産管理会社に相続分を譲渡しようと考えています。この場合、どのような課税関係になりますか。

有償の場合、譲渡人は相続税及び譲渡所得税、譲受人(法人)は課税されません。無償の場合、譲渡人は相続税及びみなし序と所得税、譲受人(法人)は法人税が課税されます

相談者が資産管理会社に相続分を譲渡した場合の課税関係は、譲渡有償か否かで異なります。

まず、有償(相当な価格)で相続分を譲渡した場合、相続分の譲渡に関して譲渡所得税が課税されます(なお、時価の1/2未満の価格で譲渡した場合、時価で譲渡したものとみなして課税がなされます。詳細は後述します)。

また、相続分の譲渡人は、相続税が課税されます(詳細は、「共同相続人以外の者に対する相続分の譲渡」をご覧ください)。相続分の譲受人である法人は、時価で譲り受けた場合は、課税はありません。

次に、無償で相続分の譲渡が行われた場合、相続分の譲渡人には、みなし譲渡所得税が課税されます(所得税法59条1項1号)。個人に対する無償の相続分の譲渡の場合、相続分の譲渡に関して、譲渡人に課税はありませんが、譲受人が法人の場合には、上記のみなし譲渡所得税が課税されることになります。

また、法人に対して、「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(所得税法59条1項2号)」がなされた場合も時価で譲渡がなされたものとされます。政令で定める額とは時価の1/2未満とされています(所得税法施工例第169条)。したがって、無償ではないものの、時価より安い対価で相続分を譲渡した場合も譲渡所得税の問題はでてきます。もちろん、譲渡人には相続税の納税義務もあります。

他方、無償で相続分を譲り受けた法人には、法人税が課税されます。

法人に相続分を譲渡した場合の課税関係は以上のとおりですが、はっきりいってややこし過ぎますし、ここまでして、法人に相続分を譲渡する意味は普通はないと思われます。

共同相続人間の相続分の譲渡はとても便利ですが、共同相続人以外の者、特に法人に対する相続分の譲渡は余程のことがない限り、止めたほうがいいなと強く思います。

参考条文

所得税法59条

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条  次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二  著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2  居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

所得税法施行令

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
第百六十九条  法第五十九条第一項第二号 (贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項 に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

 

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