相続財産の売却と代金債権の相続財産帰属性

遺産分割前に相続財産(不動産)を売却した場合、その売却代金も遺産分割協議の対象にしなければなりませんか

 先日、相続財産の一部である不動産を売却しました(他の相続財産に関 する遺産分割協議は成立していません)。その後、売買代金全額を受領した 兄に私の法定相続分に相当する金額を支払うように求めたところ、拒絶され ました。このような場合の売買代金も遺産分割の対象になり、遺産分割協議が成立しないと支払は受けられないのでしょうか?

遺産分割前に売却した相続財産(不動産)の代金は遺産分割協議なしに受け取ることができます

 相続財産の一部である不動産を共有持分権を有する相続人全員で第三者 に売却した場合、その売却の対象になった不動産は相続財産から逸出し、そ の売買代金も共同相続人において各持分に応じて取得することになります。
したがって、ご自分の相続分に相当する売買代金の支払いをお兄さんに請 求することができます。
 

参考裁判例等

最判昭和52年9月19日

  共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前に遺産を構成する特定不動 産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各 相続人は第三者に対し持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求す ることができるものと解すべきところ、原審の適法に確定した事実関係によ れば、上告人、被上告人らの被相続人訴外Dの遺産に属する本件土地につき、 上告人は、共同相続人全員の合意に基づき、自己の持分については本人とし て、その他の共同相続人の持分については委任による代理人として、これを 訴外財団法人Eに売却し、遺産分割前に同訴外公社から売却代金を受領した というのであるから、被上告人は右売却により持分に応じた代金債権を取得 し、委任に基づき同代金を受領した上告人に対し民法六四六条一項前段に従 いその引渡を請求しうるものとした原審の見解は、正当として是認すること ができる。

 最判昭和54年2月22日

  被上告人らの上告人に対する本訴請求は、訴外亡Dの相続人である被上 告人らが、上告人その他共同相続人とともに相続により共有持分権(被上告 人らの持分割合は各七分の一)を取得した第一審判決別紙物件目録記載の各 土地を順次訴外静岡市、同静岡県、同日本道路公団に売却し、その代金の受 領を上告人に委任したところ、上告人が受任者として代金を受領したので、 上告人に対し民法六四六条所定の受任者の受取物引渡義務の履行としてそ の交付を求めるというものであつて、所論相続回復請求権を行使する場合に はあたらず、その請求について相続回復請求権の消滅時効を定めた民法八八 四条の適用の問題を生じる余地はない。もつとも、所論は、被上告人らの右 各土地の相続(共有)持分権、ないしは相続財産譲渡の対価が相続財産に加 えられるとの前提のもとに右持分権売却の対価たる代金債権が侵害された にもかかわらず、被上告人らが相続回復請求権によつてその侵害の排除を求 めなかつたため、同請求権が民法八八四条所定の時効により消滅し、その結 果土地相続持分権ないしこれに対応する代金債権を行使することができな くなり、これに伴つて上記委任契約に基づく受領代金の交付をも請求するこ とができなくなつた、との趣旨を主張するものとも解される。
 しかし、原審が適法に確定した事実関係によれば、被上告人らは右各土地 売却の時に共同相続人の一員としてそれぞれ共有持分権を有し、かつ、共有者の一員として右売買に加わつており、それらの権利についてなんらの侵害を受けていなかつたことが、明らかである。また、共有持分権を有する共同相続人全員によつて他に売却された右各土地は遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものであるところ(最高裁昭和五二年(オ)第五号同年九月一九日第二小法廷判決・裁判集民事一二一号二四七頁参照)、前記各土地を売却した際本件共同相続人の一部は上告人に代金受領を委任せずに自らこれを受領し、また、上告人に代金受領を委任した共同相続人もその一部は上告人から代金の交付を受けているなど、原審の適法に確定した事実関係のもとでは、右特別の事情もないことが明らかであるから、被上告人らは、代金債権を相続財産としてでなく固有の権利として取得したものというべきであり、したがつて、同債権について相続権侵害ということは考えられない。これを要するに、被上告人らの土地相続持分権、ないしその売却代金債権が相続財産に加えられるものとして同債権が侵害されたことを前提とする所論は、その前提を欠いて失当である。

 

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