相続と預貯金・預託金

相続が発生した場合、被相続人の預貯金・預託金の取扱いはどうなりますか

 先日、夫が亡くなりましたが、銀行に夫が亡くなったことを知らせたところ、夫名義の預金口座を凍結されてしまいました。遺産分割協議が成立すれば、凍結を解除してもらえるようですが、事情があり、遺産分割協議が成立するまで時間がかかりそうです。そこで、預貯金・預託金だけでも遺産分割協議が成立する前に受け取ることはできないでしょうか?

原則、預貯金口座は凍結されますが、法律上の根拠を示すことで法定相続分に応じた払い戻しを受けることができます

 遺言がないままに相続が開始した場合、各相続人が遺産分割をすることなく法定相続分にしたがって預貯金・預託金を取得します。したがって、法律上、各相続人は、法定相続分に応じて、預金・預託の返還請求をすることができます。

 もっとも、銀行等の金融機関は、通常、相続人による個別の預金払い戻しを拒絶しますが、上記の法律上の根拠を示して交渉をして個別の払い戻しに応じる場合もあります。それでも拒絶された場合は、預金返還請求訴訟を提起することになります。

 預貯金・預託金は、法律上は、預貯金債権・預託金債権という金銭の支払いを求める債権(金銭債権)になります(なお、定額郵便貯金については、郵便貯金法7条により分割払い戻しが否定されていることから、法律上当然に分割されることはありません)。

 相続財産については、民法898条が「相続人が数人あるときは、相続財産は共有に属する」と規定し、この共有は民法249条以下の共有と同様であることから、金銭債権等の可分債権に関しては、民法427条の規定に照らし、各相続人の法定相続分により当然に分割されるというのがその理由です。

「民法427条の規定に照らし」としているのは、同条は、可分債権について、均等割りとすることを規定していますので、法定相続分で分割するという結論を直接導くことはできません。そこで、民法427条の規定に照らしとの表現になっているものと思われます(参考裁判例参照)。

参考裁判例 東京高判平成7年12月21日

 相続人が数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権がある ときは、その債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じ て権利を取得するものと解するのが相当である(最高裁昭和二七年(オ)第一 一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決・民集八巻四号八一九頁、同昭和二 八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九 三頁参照)。この理は、相続財産が被相続人の銀行(銀行法二条一項)に対する 預金払戻請求権及び証券会社(証券取引法二条九項)に対する預託金返還請求 権である場合であっても異ならない。なぜなら、民法八九八条は、「相続人が数 人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」旨明定しており、その共有の 性質は同法二四九条以下に規定する共有と異ならず(前掲最高裁昭和三〇年五 月三一日第三小法延判決参照)、かつ、金銭その他の可分債権については、遺産 分割前であっても、同法四二七条の規定に照らし、各相続人が相続分の割合に 応じて独立して右債権を取得するものと解するのが相当であるところ、右と同 様の金銭債権である本件預金払戻請求権及び預託金返還請求権につき、これと 別異に解すべき理由がないからである。また、このように解することが相続人 らの公平と利益に合致するゆえんでもある。

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