被相続人と同居していた相続人による寄与分の主張を排斥し、法定相続分を基礎とした代償分割を実現した事例

1.事案の概要

(1)相続人等

被相続人の子供4名(長男、長女、二男、二女)

(2)遺産の内容

  • 土地2筆(利用状況としても2物件です)
  • 預貯金約1200万円

(3)被相続人の生活状況

被相続人は、二男夫婦の自宅に同居していました。生活費は、被相続人が自分の年金から捻出をしており、経済的に二男が援助しているという状況ではありませんでした。他方、二男夫婦は、被相続人の日常生活を支え、通院に付き添うなどはしていました。

(4)遺産分割協議の経過

相続開始後、長男から二男に対して遺産分割の話を切り出したところ、二男からは、他の相続人に各100万円を支払い、遺産はすべて二男が取得するとの提案がありました。長男、長女、二女は二男の提案に不満であり、交渉を継続したところ100万円の提示が200万円に増額されましたが、これ以上交渉は進展しませんでした。そこで、長男ら3名が当事務所に遺産分割協議の代理を依頼されました。

2.事案の問題点

(1)不動産評価の問題

本件では、土地が2物件存在しておりましたが、これらの土地は静岡県掛川市の調整区域に所在しており、流通性に問題があると思われる物件でした。また、上記の土地の1つには、二男所有の建物が存在しており、更に換価を難しくしていました。

(2)寄与分の主張

二男は、代理人弁護士を選任し、被相続人と同居してもろもろの面倒をみたことを寄与分として考慮すべきであると主張しており、この主張に対する評価が問題となりました。

(3)管轄の問題

より現実的な問題として、管轄の問題がありました。
本件では、長男は東京、長女と二女は埼玉、二男は静岡県に住んでおり、調停は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになるため、二男に対して遺産分割調停を申し立てた場合、静岡県まで出張する必要があり、日当・交通費を考慮すると費用負担が重くなる恐れがありました。

3.対応内容

(1)不動産評価の問題

本件の不動産は、立地・使用状況の点からみて、流通性が低いことから、形式的な評価額に拘泥すると、二男側が代償分割を断念し、換価が事実上困難になる可能性を踏まえ、固定資産税評価額+α程度の評価で合意し、これを基礎に遺産分割を行いました。

(2)寄与分の主張

本件では、被相続人所有の土地上に二男所有の建物が存在しており、被相続人と二男の間で使用貸借契約が成立していると評価できる状況でした。そして、この二男所有の建物に被相続人が無償で居住していたとの事実も併せて考慮すると、被相続人は土地を提供し、二男は自宅を提供し、被相続人の生活の世話をすることで協力して生活を送っていたと評価するのが妥当であり、特別の寄与には当たらないとの反論をしました。最終的には、二男側は当初の寄与分の主張を撤回して遺産分割が行われました。遺産分割の大枠としては、不動産を二男、預貯金を長男、長女、二女が取得するとの方向で合意しました。この際、不動産の評価額が二男の法定相続分を上回っておりましたが、長男らから、寄与分に当たらないとしても同居の労は一定程度評価したいとの意向が示され、上記の点は問題とされませんでした。

(3)管轄の問題

本件は、調停を申し立てた場合、時間的・経済的な負担が重い事案でしたので、一般的な案件よりも時間をかけて裁判外で交渉を行い、合意を取り付けました。紛争が激化している事案の場合、裁判外の交渉に時間をかけても解決に至らないことも多く、当職としては、一定のところで見切りをつけて調停を申し立てた方がかえって早く解決することが多いと感じています。本件は、長男らが分割方法のプロセスに不満があるものの、分割割合については比較的柔軟に対応する意向を示されていたことから、うまく交渉での解決ができた事案と言えます。

4.弁護士小池のコメント

遺産分割協議において、被相続人と同居していた相続人から寄与分の主張がなされることは珍しくありません。しかし、相続人の同居の労が当然に寄与分になるわけではありません。また、同居している場合、相続人から被相続人に対する世話・介護などに対し、被相続人から相続人に経済的な援助がなされていることも多くあります。これらは、個々に特別受益や寄与分として評価するよりも、一体として親族間の相互扶助義務を履行しているとみるのが自然な場合も多くあります。
本件もこのような枠組みで反論した結果、寄与分の主張を排斥することができたという点で参考になると思われます。

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